こんにちは、凪です!
今回の記事では、2021年10月に発売された伊坂幸太郎さんの新作『ペッパーズ・ゴースト』をご紹介します。
作家生活20周年の記念作品ともいえる、待望の書き下ろし長編です!
- どんな本なのか知りたい
- 面白そうなら読んでみたい
と思っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
読んだ感想
初の伊坂幸太郎作品でしたが、「これが伊坂ワールドか」といった感じで、構成の面白さとストーリーの疾走感にどんどん引き込まれていきました。
主軸の物語と、作中に挿入される”もう1つの小説”。
ただの作中作かと思いきや、思いがけない形で交わっていく展開がとても面白かったです。
読み終えたあとに、もう一度全部知った上で読み返したくなる、そんな作品でした。
少しネタバレ
結末には触れない程度に、もう少し深掘りしていきます。
あらすじ
主人公は、他人の未来が少し見えるという不思議な力をもつ中学校の国語教師・壇。
彼は、女子生徒から、猫を愛する奇妙な二人組「ネコジゴハンター」が暴れる風変わりな小説原稿を渡される。
さらに、ある生徒の些細な校則違反をきっかけに、壇は思わぬ出来事へと巻き込まれていく。
不思議な超能力
主人公がもつ超能力は、他人の明日の未来がほんの少しだけ見える、という不思議な予知能力ですが、その能力にはたった1つ発動条件があります。
それは、”飛沫感染”です。
まさに現代といったように、現実世界の社会的なキーワードや出来事が巧みに織り込まれています。
永劫回帰
今作のテーマとなっているのは、ニーチェの「永劫回帰」。
この思想が、ストーリーにも登場人物にも、根底的な考えとして反映されています。
永劫回帰とは、簡単に言えば「永遠に同じ人生を繰り返す」という意味です。
しかしこれはニヒリズム(虚無主義)による考え方で、反対に「もう一度同じ人生を、と思えるように生きていこう」という肯定的な解釈でもあります。
捉え方によって意味合いが違いますよね。
これは、生きていても言えることです。
本作を読むと、人生や物事をどう捉えるかで生き方は大きく変わる、というのを改めて考えさせられます。
メタフィクション的要素
個人的に面白かったのは、メタフィクション的な要素です。(メタフィクションというのは、フィクションの中でそれが作りものであるということをあえて読者に気付かせる手法のこと)
まるで、自分が本作を読んでいることを、登場するキャラクターたちが見透かしているような、そういう描写が何度も出てくるのです。
”じぶんは小説のいちキャラクターに過ぎない”と言ったり、それを知ったうえであえて”我々読者のために”分かりやすく説明してくれたり、読んでいて不思議な感覚に陥ります。
『ナイトミュージアム』の主人公になった気分でした。笑
てんこ盛り
ここまででお気づきかもしれませんが、とにかく色んな要素がてんこ盛りなのです。
主人公の超能力に、作中で挿入され並行して進んでいく小説、ニーチェの思想、メタフィクション、、他にも色々と出てきます。
僕の本を読んでくれている人なら分かると思うんですが、今回は、得意パターン全部乗せなんですよね。自分の家の冷蔵庫にあるものを全部使いました、という感じで(笑)。
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伊坂さんご自身も、インタビューで「得意パターン全部乗せ」と仰っているくらい(笑)
それでも不思議なのは、決して重すぎないということ。
重すぎないどころか、軽快さすら感じながら読み進めていくことができます。
それは、それらの要素が巧みに散りばめられているからというのは勿論、あとはキャラクターが生きているからだと感じました。誰も死に役じゃなく、個性がある感じ。
加えて、キャラクター同士の些細な会話がテンポよく面白いんですよね。
重厚感のある一冊ですが、読んでみるとスイスイ読めてしまうのでおすすめです!
最後に
今回は、伊坂幸太郎著『ペッパーズ・ゴースト』をご紹介しました。
これまで伊坂ワールドを堪能したことのある方はもちろんのこと、わたしのように初めてという方も楽しめる一冊です。ぜひ!
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