こんにちは、凪です!
今回の記事では、2021年11月に発売された川村元気さんの新作『神曲』をご紹介します。
映画「告白」「悪人」「モテキ」「おおかみこどもの雨と雪」「君の名は。」などヒット作をプロデューサーとして手掛けてきた川村元気さんの、小説家として5作目となる作品です。
- どんな本なのか知りたい
- 面白そうなら読んでみたい
と思っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
読んだ感想
美しい装丁と、中央にシンプルに配置されたタイトルに目を奪われ手に取った1冊。
没頭し、一気に読み終えたときの率直な感想としては、「不思議」のひとことでした。
読みやすい文章で、ストーリーもしっかり入ってくるのだけれど、不透明さが残る。
しかし、それが決して心地悪いわけではないのです。
「はい、読み終わって終わり」という気分にはならない、まるで当事者になって考えさせられる”不思議な”本でした。
その読了後の余韻も含めて、個人的にオススメしたい1冊です!
少しネタバレ
結末には触れない程度に、もう少し深掘りしていきます。
あらすじ
小鳥店を営む檀野家の平穏な日常は、突然終わりを告げた。
息子が通り魔事件で刺殺され、犯人は自殺。
地獄に突き落とされた父、母、姉の三人が、悲しみと怒りを抱えながらも足搔き、辿り着いた先にあるものとは。
次々に明かされる家族の秘密、ラスト20ページの戦慄、そして驚嘆の終曲(フィナーレ)。
震えるほどの感動が待つ、著者渾身の飛躍作。
川村元気 『神曲』 | 新潮社 (shinchosha.co.jp)
神様とは、信仰とは
本作は、「宗教」がテーマになっています。
それだけ聞くと「難しそう」と感じるかもしれませんが、誰しも”目に見えないものを信じる”という行為は経験しているはずです。
たとえば、お盆にお墓参りをしたり、節分に豆まきをしたりするのもその一種ですよね。
最近では、神社仏閣巡りやパワースポット巡りなんかもよく耳にするようになりました。
しかし、いざ「神様ってなに?」と問われれば、姿かたちのない「概念」としか言い表せられないのではないでしょうか。
そんな概念に、人はなぜ良くも悪くも翻弄されてしまうのか。
その答えへの糸口が、この1冊には隠されているように感じました。
3人の視点
本作は3章から成り立っていて、章ごとに人物の視点が移り変わります。
ダンテの『神曲』はご存知の通り、地獄篇と煉獄篇と天国篇という三つにわかれていますが、なんで三つなんだろうとまず思ったんです。「神」のような、目に見えないものを描くときに、一人の目線だと偏る。二人だと対立構造になってしまう。三角形で描くと、そこが立体的に見えてくるのかなと思って、僕も、「信じられない父」と「信じきってしまった母」と、「その両親の間で揺れる娘」という三篇構成で描くことにしました。
川村元気 『神曲』 | 新潮社 (shinchosha.co.jp)
神や宗教を信じられない父に、信じきってしまった母、その両親の間で揺れる娘。
宗教ひとつに対して、三者三様の考え方がある。これが、まさに「信仰」の複雑さを物語っています。
ちなみに、上記で著者も仰っているように、タイトル『神曲』はイタリアの詩人・ダンテの代表作からきているんですね。
この由来となったダンテの『神曲』は、生きている人間が死者の住む3つの世界(地獄、煉獄、天国)を旅するお話で、作中でもこの3つの世界の話が幾度か登場します。
さらに、個人的に感嘆したのは、章ごとに文体が異なっていることでした。
視点が変わり、いわば主人公が変わるので、当然と言われればそうなのですが、読むリズムをガラッと変えられてしまうのが不思議な感覚で面白かったです。
最後に
今回は、川村元気著『神曲』をご紹介しました。
読了後の不透明さ、これはある意味正解だったのかもしれません。
神、宗教、信仰、、、そう簡単に答えが出るものではないのですから。
そんな不思議な感覚を味わってみたい方は、ぜひ。
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