こんにちは、凪です。
今回は、オランダ出身の歴史家、ルトガー・ブレグマン著『Humankind 希望の歴史』をご紹介します。上下巻のハードカバーでありながら、描かれている事例の面白さと興味深さでサラリと読めてしまいます。
- どんな本なのか知りたい
- 面白そうなら読んでみたい
と思っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
読んだ感想
これだけの内容を簡単に読んでしまって良いのだろうか、と疑念さえ抱いた重厚感のある1冊。
この本をつくるのに、一体どれだけの時間と労力を費やしたのだろう。
「性善説」について説かれた本かと思いきや、「人間の本質」について歴史と絡めながら、誠実に、真摯に、そして丁寧に向き合っている内容でした。
人間が本質的に善であるとするならば、なぜ戦争が起こるのか、なぜ凶悪事件はなくならないのか、なぜ、、
人に対して不信感や恐れを抱きやすいこの世の中で、疑うこと、考えることは大切だけれど、善き未来も信じられるかもしれない。
世界を見る目が変わるような、そんな希望と衝撃をぜひ感じてみませんか。
今だからこそ紹介したい1冊です。
少しネタバレ
結末には触れない程度に、もう少しこの本の魅力をご紹介します。
あらすじ
近現代の社会思想は、”性悪説”で動いてきた。(中略)また”性悪説”を裏付けるような心理学実験や人類学の調査がなされてきた。(中略)だが、これらは本当か。
著者は、”暗い人間観”を裏付ける定説の真偽を確かめるべく世界中を飛び回り、関係者に話を聞き、エビデンスを集めたところ意外な結果に辿り着く。
なぜ人類は生き残れたのか。民主主義や資本主義や人間性の限界を踏まえ、いかに社会設計すべきか、どう生き延びてゆくべきかが書かれた「希望の書」。
『Humankind 希望の歴史 上 人類が善き未来をつくるための18章』ルトガー・ブレグマン 野中香方子 | 単行本 – 文藝春秋BOOKS (bunshun.jp)
オランダでは25万部を突破し、世界46か国でベストセラーとなっています。
人類が善き未来をつくるための18章
本書は、序章とエピローグに加え18個の章から構成されています。
少年たちの残酷さを描いた『蠅の王』という小説、イースター島の崩壊、スタンフォード監獄実験、ミルグラムの電気ショック実験、キティの死etc.
世界中に溢れた、まるで「性悪説」を証明するかのような歴史や実験たち。
それらに正面から向き合い、時に研究のいかさまを暴きながら、性善説の可能性を見出していきます。
人間についての暗い見方
著者は、本書を通して「ほとんどの人は本質的にかなり善良だ」と述べています。
しかしその一方で、このような問いを抱いてきたと言います。
長い間、わたしの関心を引いてきた問いは、なぜ誰もが人間に対してそのように暗い見方をするのか、というものだ。身近な人々については、信頼できると直感的に思うのに、なぜ人間全体に対しては態度が変わるのだろう。なぜ、多くの法律や規則、企業や団体が、人間は信頼できないことを前提としているのだろう。
『Humankind 希望の歴史(上)』ルトガー・ブレグマン/第1章 34頁
「人は悪者だ」という考えを、なぜ人は信じたがるのでしょう。
そもそも、なぜそのような考え(性悪説)が当たり前となっているのでしょう。
人は悪の生き物だから、争いごとが絶えないのか。
それとも、過去の惨事が性悪説をつくりあげたのか。
著者と共に、世界の歴史に目を向けながら、自身も考えさせられます。
著者について
ここまで、本書のざっくりとした内容を紹介してきましたが、著者であるルトガー・ブレグマンについても少し触れたいと思います。
ブレグマンは前述した通り、オランダ出身の歴史家・ジャーナリストです。
彼はとある対談でこう語っています。
(前略)希望を持てる人間観が広まっており、それを知るのは大事だと私は考えました。なぜなら、人間の本性をどうとらえるかによって、私たちの組織の形も変わってくるからです。
「地球を制したのがチンパンジーでない理由は、人類が大量のナンセンスを信じられるからです」 | ユヴァル・ノア・ハラリとルトガー・ブレグマンが語る「人類の過去」 | クーリエ・ジャポン (courrier.jp)
”知ることが大事”
この言葉に、本書を読む価値が詰まっていると感じました。
著者は、ただ性善説を押し付けているわけではないのです。
おわりに
本書が多くの人の手に渡り、この考えが広まったとしたら、その先の未来はどうなるだろう。
本を読み終えたとき、その本に希望を託したのは初めてでした。
人の数だけ事実は存在するけれど、真実はたったひとつです。
著者の言葉通り、歴史を学び、真実を知り、希望を信じることは大切ではないでしょうか。
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